野田久順さん、質疑応答
――YouTubeの放送を見ていてわからない方のために。そもそもCSAとはなにか? 会員になるためにはどうすればいいのか?
野田「はい。CSAとは『Computer Shogi Association』。コンピュータ将棋協会の略でございます。CSAでは会員を募集しております。公式HPの方に申し込み方法が書かれているかと思いますので、そちらの方をご覧いただければと存じます」
――PyTorchのNLLを使って、どれぐらい学習速度が速くなった? 去年に比べて評価関数はELO(レーティング)で強くなった?
野田「まず速度の向上につきましては、GPU4090を使用した場合に、CPUの方に比べて、約7、8倍ぐらいは速くなっていたかと思います。またレーティングの向上に関しましては、去年のバージョンとの比較はしていないんですが、電竜戦ハードウェア統一戦の方で有料頒布しているLi-VENGE有料版に比べて、評価関数部分のみで約45程度。そして評価関数と検索部を合わせて122程度向上しています」
います。
――本大会も相入玉が非常に多かった。本大会のルールでは320手に到達すれば引き分けで、その手数制限の中、逃げ切れるかどうかみたいな展開も多かった。このルールについて野田さん自身はどう思われているか。将棋の結論は「先手必勝」なのか「引き分け」なのかみたいな議論がある。コンピュータ将棋の最新の話としては、どういう方向に近づいているのか。
野田「あくまで個人的な意見となりますが、まず相入玉に関しまして、特にルールに関しましては、私は個人的な感想は特にございません。与えられたルールの中で最善を尽くすしかないというふうに考えております。続きまして、将棋の結論に関しましては、私個人の意見といたしましては、ルール次第なのではないかというふうに思っております(会場笑)。例えばコンピュータ将棋に関して言いますと(相入玉の際には)27点法が使われておりまして。そしてプロの棋戦ですと24点方が使われております。このルールの違いによって、もしかしたら将棋の結論、違うかもしれませんし。手数によっても違ってくるかもしれません。ルール次第じゃないかと思います」
――今回開発された中で、なにかやり残したこととか、これからやってみたいことがあれば教えてください。
野田「今回に関しては、やり残しは実は、まったくございません。やりたかったこと、特に評価関数の学習の部分につきましては、もう自分ができる全てができたんじゃないかなと思いました。ただ、やり残しではないんですが、まだまだその評価関部分が、改良の余地、残っていると思いますので、これから改良を続けていきたいと思っています」
――ELO(レーティング)を45上げるのに一番効いたのは?
野田「一番の理由は、nnue-pytorchを使ってやねうら王純正のCPU版の学習器のエミュレーションをおこなったことだと思います。例えば、やねうら王純正の学習器には、学習途中でネットワークを組んだネットワークパラメータをクリッピングする機能がついています。これを移植したところが、レーティングが少し上がったりしました。他にも量子化のタイミングですとか、あるいはスケールといったものもやねうら王の方からコピーしてきまして。そういったものがちょっとずつ積み重なって、最終的にはレーティング向上につながったと認識しております。
――用意した、学習させた棋譜はそんなに変わってない?
野田「レーティングの向上には寄与しているんですが、それが一番というわけではないという状況です」
――優勝して、そろそろDL系? それともまだCPU(NNUE系)でやり残したことがある?
野田「まだCPUでやり残したこと、といいますか、先ほどの質問の答えとかぶってしまうんですが、まだまだ改良の余地があると思いますので、そちらの方をしばらくは続けていきたいと思います」
――定跡に関してはざっくり、どのような考え?
野田「ざっくりとした質問としては『定跡勝負だな』って思ってます。定跡わるいと、いくら評価関数がよくてもダメだなって感じております。『じゃあ、定跡どうしよう?』っていうと、私にはわかりません(会場笑)。正直申し上げて、もう定跡勝負なんですけれど。そこにはちょっと、私はもう、土台に立つことすらできておらず『どうしようかな』という感じです」
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